2009年03月

侍ジャパン勝因を分析するその7イチローを使い続けた

極度の不振のイチローの扱いは難しかったことと思う。メンタルも、技術も、全員が認めるチームリーダーが不振だと、全体に与える影響は大きい。イチローも人の子、かなりの精神的なプレッシャーに潰されそうになっていた。
平時の状態から言えば、信じられないような結果だった。
TVで素人の我々が見ても、当然打てる球を見逃し、難しい球に手を出していた。多分に気分的なものだと思うが、200本安打をあれだけ続けた選手でも普通の状態ではないので、選球眼もおかしくなっていた。
しかし、自他共に認めるチームリーダーだ。不振の間、イチローは早出特打の責務を自分に課した。誰よりも早く球場に出てきて、自ら志願して特打を実行した。これを見ていた若い選手に、刺激にならないはずがない。
あの天才と言われたイチローでも、不振になるときがある。そして、脱出するのに、あれくらい悩まないと答えは見えてこない。
それを敢えて知っていて、原監督はイチロー一番にこだわった。結果論だが、この我慢と辛抱が栄光をもたらした。

侍ジャパン勝因を分析するその6守りから考える

野球は投手が80%といわれている。バッターの勲章は3割だが、10本のうち7本はミスしても、立派な打者と賞賛される。あの偉大な長嶋でも、生涯打率3割に最後までこだわった。ことほどさように、打つ確率は低い。
それに引き換え、投手の成績は、そのままチームの失点の実績だ。これを防御率で見ると、ジャパンの投手陣は2点以下だった。これはすごいことで、9回戦って、投手が2点取られないということだ。
韓国に二つ負けたが、そんなに打たれたわけでもない。特に、ひとつは0対1で負けている。これは打撃陣の責任だ。
野球は、まずは守り。失点をいかに最小にして、最小の得点で逃げ切る。だから、ディフェンス=守備がよくないと、試合にならないし、計算が立たない。
今回、苦戦したひとつの理由は、投手が逃げて四球が多かった。勝負する以前に、逃げ腰だった。そういうときは、必ずやられる。
攻めのピッチングのときは、その迫力に押されて、バッターが萎縮する。野球は一方では、心理戦だから、気の強いほうが、勝つ。
今回の勝因の大きな部分は、守り、特に投手力が際立っていた。松坂や岩隈が賞賛されているが、本当に玄人から見ての賞賛は、杉内ではないだろうか。彼は一度も得点を許していない。それくらい、素晴らしかったし、中継ぎの仕事を見事にこなした。

侍ジャパン勝因を分析するその5統一したコンセプト

北京五輪は「星野ジャパン」で惨敗した。読売の渡辺ドンの気遣いもあったろうが、今回は「原ジャパン」にしなかった。人の名前をつけると、そのリーダーの私物化のようにイメージされる。
そこで、このチームをどういう風に呼ぼうかと、関係者は知恵を絞った。そこで出てきたのが「侍ジャパン」だった。
少々、前時代的で当初は馴染みにくかったが、聞いているうちに馴染んできた。なにより、敢えて原ジャパンをやめて、みんながひとつにイメージできるキーワードを選んだ。昔の武士の潔さ、パワー。そんな日本人のイメージを、ひとつのキーワードに集約したマスコミ作戦は、ずばり当たった。
特に、アメリカと戦うことを想定した統一コンセプトだったが、結果的には韓国とのマッチレースになった。ここは、少々誤算だったか。
それにしても、これを考えた広告代理店の人?は、拍手ものだ。このキーワードのおかげで、日本中がひとつのイメージにコンセントレーションできた。集約できた。
おそらく、間違いなく、年末の今年の言葉に選ばれるだろう。ひとつイメージが合わなかったのが、原監督が当初の記者会見で、チームを船に例えて、目指す港へ出航するというくだりがあったが、あれは侍ジャパンのイメージとは、少々ミスマッチだった。

侍ジャパン勝因を分析するその4複数のポジションが守れる

今回のチームで、バッテリー以外(投手と捕手)で複数のポジションが守れなかった選手は、いなかったのではないかな?
中島はずっと遊撃だったが、ショートが守れれば、セカンドもサードも守れる。岩村も、もともとはサードだった。片岡もどこでも守れるし、内川も外野も内野もできる。小笠原もサードもできるし、最年長の稲葉も、どこでも守れる。
一芸に秀でるのもいいが、短期決戦の勝負だと、場面場面でいろいろな用兵を駆使しないといけない。
そのときに、ここしかできないという選手ばかりだと、非常に選手起用が難しい。また、左ピッチャー対策として、右バッターを並べないといけない。
そういうフレキシブルな用兵に答えるには、マルチタレントでないと難しい。
大物打ちばかり並べても、野球は勝てないのだ。
しかし、複数のポジションが守れるといっても、このレベルは非常に高い。
難しい内野ゴロで、ダブルプレーが取れるか、取れないかという、紙一重の違いで、次の展開がごろっと変わる。
韓国も、非常に守りが堅かった。決勝戦で、名手のセカンドがライナーを弾いたが、その後は見事に守った。
複数のポジションをこなせる選手を、見事に場面場面で使いきった原ジャパンの勝利だった。

侍ジャパン勝因を分析するその3足の攻撃

足のある選手を選んだこと。
片岡、中島、青木、内川、川崎など、身が軽く、足の速い選手を選んだ。
足の攻撃は、波がない。打撃は水物だが、盗塁は、足はスランプがない。ヒットで出塁し、盗塁で2塁をとれば、二塁打を打ったのと同じだ。
ランナーが二塁に行くと、外野手はホームで殺そうと、一歩、二歩前に出る。
そうなると、外野の間が広くなる。
過去に、阪急の福本が1シーズン100盗塁以上した年があったが、ヒットが100本多かったのと、同じだ。
足の速い選手がバッターボックスに立つと、内野は少し前に守る。そうするとヒットゾーンが広がる。
一塁に出塁すると、盗塁を恐れて投手はクイックモーションで投げる。そうなると、コントロールがつかない。
走ると思うと、カーブは投げにくい。まして、落ちる球は、もっと投げづらい。必然的に、ストレートが多くなる。打者は狙いやすい。
足の攻撃は地味だが、守っているほうからすれば、厄介なこと、この上ない。
おそらく、足の速い選手で固めるという方針は、今後もアメリカに対抗する要素として、非常に大きいだろう。
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